遠藤雷太のうろうろ日記2

札幌の劇作家。日本劇作家協会会員。 演劇の感想は、できるだけ「否定的なことを書かない」「社交辞令で褒めない」「人と違うことを書く」という方針。

「似鳥美術館」(小樽芸術村)

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2025/11/4

おたる水族館からの元三井銀行小樽支店ですっかりくたびれたので、次の施設どこに行くか迷う。

・もらったプリントに「迷ったらまずはここ!」と推されていた似鳥美術館に決める。

・所要時間の目安は60分らしいが信用できない。

・旧北海道拓殖銀行小樽支店の建物を利用している。敷地面積はそこまで広くない。

・ただし、4階+地下1階すべてがギャラリーになっているので、最初の印象以上にボリュームがすごい。

・別にステンドグラス美術館があるのに、ここの1階もステンドグラスの作品が並べられている。ルイス・C・ティファニーの作品群。

・ステンドグラスは配置重視のイメージだったけど、色味の不均衡さや、ゴロゴロした立体的な変化もある。顔と顔以外の画風の違いが慣れない。

日本画のフロアには、伊藤若冲横山大観円山応挙といった、錚々たる面々の掛け軸が並んでいる。

東山魁夷、片岡珠子、岸田劉生岡本太郎などなど。

・名前は良く聞く北大路魯山人の作品は初めて見たかも。

・一応、芸術作品を見るときには、何とか自分の中で消化しようとしながら見るようにしているけど、次から次へとビッグネームが出てくるので頭が追いつかない。

・開き直って浴びる感覚で楽しむ。

藤田嗣治の「カフェにて」。作品の横に「なんでも鑑定団」で10億円と判定されたと紹介されている。

・テレビ番組のロゴは美術館の雰囲気に馴染まないけどわかりやすい。大泥棒がいたらターゲットになりそう。藤田作品は総じて高額。

・順番は逆だけど、どうしても荒木飛呂彦っぽいと思ってしまう。

・全然知らなかったけど、平櫛田中の木彫もおもしろかった。このサイズと可愛らしいタッチの木彫は、今まであんまり見たことなかった。

・柴山細工飾棚やギラギラした大壺、ホントに光っているアンモライト。派手な展示も多く、飽きない。

・美術館は特別展に注目しがちだけど、このボリュームだと常設展示を定期的に見たくなる。

・2時間近くいた。もう脳の容量が限界だったので、残りの3館は後日にまわすことにした。

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www.nitorihd.co.jp

「旧三井銀行小樽支店」(小樽芸術村)

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2025/11/4

文化の日だからということもないけど、小樽芸術村の共通チケットを購入する。

・全部で5施設。配っていたプリントを見てみると、滞在時間の目安は全部で4時間。

・まずは旧三井銀行小樽支店に入ってみる。

・本施設の所要時間の目安は30分。実際、いくら国の重要文化財と言っても単なる銀行の跡地。そんなにたくさん見なきゃいけないこともなさそうだし、最初の施設としては適切なはず。小手調べ。

・竣工1927年。2002年までは現役の銀行として使用されていたらしい。

・外観は歴史を感じさせる石造りの建物。

・受付のときに1日ですべての施設を回らなくてもいいと言われる。期せず保険をかけてもらった。

・小樽が北日本最大の経済都市だった頃の銀行。

・主に一般客が利用する外側のスペースと、銀行員が業務を行う内側のスペースがあり、カウンターで区切られている。二階のテラス部分から見下ろすと、そんなレイアウトがきれいに見える。内側のスペースが広い。

・ポイントになる場所に、それぞれの解説カードが置いてある。さっそく、「この建物は石の建物ではない」と釘を刺される。鉄の骨組みとコンクリート製とのこと。石は表面に貼っているだけ。

・昔の加減がわからないと、こういう勘違いをする。

・ちなみに表面の石は岡山県の高級花崗岩とのこと。

・所詮銀行と思ってはいても、フィクションでしか見ないような巨大金庫とか、地下にある貸金庫の仕掛けを目の当たりにすると、ワクワクはしてしまう。

・100年前に製造された時計は今も動いているし、あえて雨だれの跡のある当時の壁紙をそのままにしている。保存に対する意識が高い。

豊平館の時も思ったけど、ARの仕掛けがよくわからず。スマホ越しに長テーブルに要人が並ぶ映像などが見られるらしいけど、どうやってもそうならない。

・これなら普通に映像か何かで観たいけど、現地ならではの仕掛けを目指すとこういう感じになってしまうのかな。

・天井を利用したプロジェクションマッピングも上演していた。早起きしたせいで途中の記憶がない。あっという間に終わった。

・気が付いたら1時間経っていた。あと4施設。

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「おたる水族館(+鰊御殿)」

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2025/11/3

・覚えている範囲で2回目の来館。

・後の予定が詰まっていたのでほぼ始発を利用。朝9時前に到着。まだ開館していない。

・しかも小雨。海が目の前。岩がちの海岸なので、波が高く、不慣れな人間が不用意に使づくと危なそう。

高倉健主演の『遥かなる山の呼び声』を見たこともあって、鰊御殿に興味が向く。バス停から徒歩10分とあるけど、高低差はかなりある。

・狭いつづら折りの坂道を抜け、錦御殿に到着。

・こちらも開館時間前なので建物の雰囲気だけ味わう。

・展望スペースからの景色がすばらしい。遠くの留萌方面の陸地が見える。車道から戻る。

・それでも少し待ってから、ようやく水族館に入館。

・浅めのプールで3匹のウミガメに迎えられる。アカウミガメ2匹とアオウミガメ1匹。亀とは言え、まったく動かない。たしか前もこんな感じだった。

・奥の巨大水槽では、右鰭を失う怪我で保護されたウミガメの太郎がいた。2年前から変わりなく安心。

・ホシエイとトラフザメが相変わらず巨大で見入る。

・ミニ特別展「うんこ展」。いろんな動物のウンコの写真などを展示している。道内各地の水族館、動物園から、100種類の動物のウンコ写真が展示されている。

・学術的には大作なんだろうけど、スタッフの方々はどういう気持ちでこの写真を集めたんだろう。

・日本ではここでしか見られないネズミイルカ。パフォーマンス的なことをする予定はないのかな。

・室蘭水族館のシンボル、アブラボウズもいた。

・オヒョウもじっくり観察する。目つきが怖い。

・イルカのイベントでは、昨年生まれたばかりのバンドウイルカ「レンカ」を含む三頭が登場。

・パフォーマンスもあるけど、シンクロ率の高い二頭に比べて、レンカがわりと自由に泳いでいる。

・前にペンギンショーで「動物の主体性を尊重する」と紹介されていたことを思い出す。

・自由だからこそ、仲間たちを真似て、高速で泳いだり、跳ねてみたりするのがほほえましかった。

海獣公園のパフォーマンスも堪能する。

・相変わらずペンギンはイベント中も自由。ほのぼのした雰囲気に、野良カラスが良いアクセントを加えていた。

 

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鰊御殿


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必ずぶブレるネズミイルカ


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チハル…


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レンカはマイペース

李相日監督『国宝』

2025/10/30

・任侠の家に生まれ、抗争で父親を失った男が、歌舞伎役者の家に拾われ、最高の芝居を目指す話。

・165分。長いは長いけど、見せ場は多く、中だるみはなかった。クライマックス級だと思われた「曽根崎心中」も序盤の山。

・舞台描写をかなりしっかり見せているので、主演の二人は「すごい演技をするという演技」を見せなくてはいけない。歌舞伎役者でもないのに。

・歌舞伎素人が見るぶんには、中心人物である吉沢亮さんと横浜流星さんはこの無茶ぶりにしっかり答えていたと思う。演者としての腕力が強い。

・スター役者を父に持つエリートと、才能あふれる余所者のライバル関係をわかりやすく見せている。

・こう書くと、同じ横浜流星主演の『線は、僕を描く』と同じ構造。類型自体はたくさんあるけど、たくさん採用だけの強さがある。

・二人ともとにかく爽やかで、こういう話にありがちな陰湿さが全然ない。嫉妬や絶望をなかなか表に出さない。出してもコントロールされている。

・加えて、良くも悪くも二人とも顔がきれいすぎるので、服を着て黙ってると、ほんとに見分けがつきにくい。

・加えて年齢を重ねてもずっときれいなまま。渡辺謙が作中であんなに老け込んでいたのに。

・最初の「二人道明寺」で二人が納得いかないところを小返ししているシーンを見せているので、コンビ復活後の最初の演目で同作を選んでいるのも腑に落ちる。

・同じ演目の同じシーンを繰り返し入れて差を見せる。

・こういう細かいパスをつないでいく感じで、3時間近くの作品を乗り切っている。

・他に、舞台衣裳の美しさを筆頭に、絵の力だけでも見応えがあるシーンが多い。

・鷺娘の照明の加減で透過する和傘かっこいい。

・稽古時のダメだしがそのまま作品解説になっているのは、こういう説明がいるタイプの芸事を扱う時の定石。

・舞台上の事故率がわりと高いのは気になる。

・背中の刺青を目の当たりにして、なお蹴りにいけるチンピラ客の胆力はすごい。

・もう精神が崩壊しちゃったかのような様子で弱々しく踊っていても、ちゃんと部屋に帰ってふて寝するだけの余力は残している。これもまた人生。

(サツゲキ)

ジョージ・ロイ・ヒル監督『スティング』(1973年)

2025/10/30

・家族同然の詐欺師仲間を殺された詐欺師の若者が、凄腕の詐欺師と組んで、仲間の詐欺師を集め、詐欺師としての敵討ちをしようとする話。

・詐欺師ばっかり出てくるし、実際こんなに集団で詐欺師が出てくる映画は、あまりないのではないか。

・傑作と名高い作品だし、ほめている口コミしかないのに、なんだかうまく乗れず。仕方なく休み休み観る。

・話が迷子になることはなかったけど、警察の立ち位置、詐欺師でも善悪ある感じ、敵とされている人間がどのくらい悪いのかがよくわからず入り込みにくかった。

・人望のある詐欺師が殺されて、彼を慕う詐欺師たちが復讐に立ち上がる。全員何かしらの職人なので、びっくりするような工作でターゲットを攪乱する。

・たぶんこの話をリアルにしていくと、前に見た『ワン・バトル・アフター・アナザー』みたいに、すっかり衰えてしまった詐欺師が紛れて場を混乱させるんだと思う。

・「この戦争が終わったら結婚するんだ」系の師匠。こんなに前からあるんだ。

・ラスボス的な裏社会の大物が、普通に窓口に並んで馬券買ってるのが、今見るとちょっと新鮮。

・ロバートレットフォード演じる若者詐欺師が警察から軽快に逃げているのが気持ちいい。特に駅の屋根を伝うところ。きれいに一本取った感じ。

・いくら昔の話でも拳銃を持ってウロウロしすぎではないか。昔の刑事ドラマはそんなものだったかも。

・凄腕の詐欺師役はポール・ニューマン

・最初に一番だらしない姿を見せてから、話が進むにつれ、どんどんかっこよくなっていく。任せておけば絶対大丈夫だろうという安心感。

・詐欺師の話というところしか知らなかったので、最後できちんと驚く。半世紀遅れ。

・そして、問題のトリック部分のシーンを思い返すのが楽しい。

・あらかじめ二人の関係性に問題が生じたように見えるシーンを置いておくのもうまい。

・アトロクを聴いていたので、エア実況のことろで、熊崎アナも同じことできるんじゃないかと思ったりする。

・アナログな時代だからこそ成立する話と言えばそうだけど、仮想現実文化が発達した今だからこそ、似たような話が作れるかもしれないと思ったりした。

(U-NEXT)

Ignacio Rodo『ベッドの下』

www.samansa.com

2025/10/28

父親が子供を寝かしつけようとしたら、怖くて不思議な状況に直面してしまう話。

たった1分の超短編。短編動画専用サイトSAMANSAのなかでもたぶん一番短い。

自分が1分で話を作れと言われたら結構困る。

いったいどんな話が見られるのか、期待半分不安半分で見てみる。

何を書いてもネタバレになるんだけど、結論、しっかりしたホラー味のある話だった。

子供の純朴な感じのふるまいや、いかにも何か起きそうな前振りに、期待通りの展開を持ってくる。

ちょい怖い、ちょい気持ち悪いくらいだけど、このくらいが一番楽しい。あんまり怖すぎても不快感が強くなってしまう。ほどよい。

こういう作品を量産できるような作家なら、食い扶持に困ることはないんだろうなと思う。

彼らがあのあとどうなったのか、野暮だと思いつつも考えてしまう。

長編作品の導入にもなりそうな作品だった。

Marc Jordan『ティモシー』

www.samansa.com

 

2025/10/28

出演するテレビ番組のチャンネルを変えられたせいなのか、ウサギのキャラクターであるティモシーが、ハンマーを持って襲ってくる話。

ジャンルで言えばホラーなんだと思うけど、全体的に味付けが濃くて、何かあるたびに笑ってしまう。

かわいらしいウサギのぬいぐるみが殺人鬼というギャップはあるけど、意外性はない。

やってることも、ホラー映画の殺人鬼としては普通だし、血の出方もなんだか機械的

起きている出来事のわりに怖くない。

ゆるキャラが、かわいらしくないことをするというコンセプトは本当にあちこちで見られるので、そのなかで独自性を出すのはかなり難しい。声はかわいい。

本作以外にも、ウサギとホラーを結び付ける作品を見たことがあるような気がする。

西洋圏には、ウサギに対して「キツネは人を化かす」みたいな日本人にはわからない特別なニュアンスがあるんだろうか。